研究・教育

2023.06.12 Report

オーストラリア・シドニー The George Institute留学を終えて 坂本 悠記

こんにちは、2007年卒の坂本 悠記(さかもと ゆうき)と申します。2021年12月から2023年3月まで、オーストラリア、シドニーにあるThe George Institute for Global Health(以下TGI)のNeurological Departmentに留学させて頂きました。ラボのボスであるCraig Anderson教授は、今までにINTERACT、ENCHANTED、HeadPoSTなど多数の国際共同ランダム化比較研究を行いその結果を一流誌に発表しており、大規模研究の進め方やその哲学、TGIの研究サポート体制、シドニーでの楽しい生活などを存分に学ぶことが出来ました。

TGIでの生活

TGIは「オーストラリアで最も成功している非営利医学系研究組織」と評されています。従前より多数の国際共同多施設研究を行っており、また「for Global Health」の名を冠しているように、中低所得国や発展途上国における保健衛生の向上や医学的な問題の解決をそのミッションとしています。Neurological Departmentも、TGIのミッションを受けてか、低リソースの地域でも、明日からでも(特別な準備なしに)、患者の転帰を改善させることのできるエビデンスの創出を目標としています。そのため、決して「最新の技術や新しく開発された薬剤を用いた、最先端の研究」を行っている訳ではありません。しかし、同様の研究を行っている研究機関は多くなく、Only oneの研究を行っている研究機関と言えるかもしれません。そういった事情もあり、TGI主宰の研究が高く評価されているのだと感じました。

TGIのオフィスはデータセンターになっており、さながらIT企業のオフィスのようです。そこで、世界各国からの留学生と共に研究を行いました。海外では専門家が多く、そのため主に自身の専門分野のみを守備範囲としており、分業制の様相が強いと感じました。そのような中で、臨床や研究、統計解析など様々な領域を経験している日本からの留学生は重宝されているようで、大規模国際共同研究からスタートアップ企業の新製品の開発試験まで、様々なことに関わらせて頂き、多くの学びと経験を得ることができ、自身の成長を実感できた留学でした。

テクノロジーの発展は目覚ましく、現在は多くのことがオンラインでできてしまいます。実際、データセンター然としたTGIでは、現地で直接手を動かす作業以外は、オンラインでも体験できたことかもしれません。しかし(もしかするとそういった時代だからこそ)、留学して感じたのは、やはり現地に赴かないと感じられないもの、経験できないもの、得られないものがあるのではないかということでした。もちろん多くの苦労も伴う留学ですが、留学後も、国際学会において留学で知り合った研究者たちと議論を交わし、旧交を温め、自身が世界の研究者コミュニティの一員となれたような感覚を実感させてくれることに繋がった、大変貴重な経験でした。

シドニーでの生活

私は家族と共に留学させて頂き、家族で異国の地に長期滞在するという経験もさせて頂きました。通じない言葉、慣れない生活習慣、どこに行っても見つからない生活必需品(と考えていたもの)など、異国の地での生活にはそれなりの苦労もありましたが、周囲の人々の温かい人柄、温暖な気候、個々人の考えをより尊重する多民族文化などに触れることができ、日本とはまた異なる言語・文化・人々に家族ともども触れることが出来たのは、とても大きな人生の経験であったように思います。また、日本と比較するとワークライフバランスに重きを置いての生活であり、オーストラリアの自然の中で家族とゆっくり過ごす時間を取れました。

最後になりましたが、留学に際し多大なご助力を下さいました木村 和美 教授、留守中お世話になった医局員の皆様方、誠にありがとうございました。